精度99%~「神の手」防ぐカメラ判定

W杯ロシア大会では、ビデオ判定(VAR=Video Assistant Referee)が初導入される。判定の正確性を高め、過去20大会で何度も物議を醸してきた、勝敗を分けるような誤審を減らすのが狙いだ。(星聡、平地一紀)

ロシアW杯でのVARの流れ

VARは、試合の映像をチェックするビデオ担当副審がアドバイスを主審へ無線で送るとともに、主審が映像を最終確認して判定するシステム。ロシア大会では、国際サッカー連盟(FIFA)が13人の担当副審を選抜した。モスクワに専用の作業室が設置され、全ての試合で、補佐役を含む4人のチームが、30台を超えるテレビカメラからの映像に目を凝らす。

流れが重要とされる競技で、VARによる中断が及ぼす影響を最小限にするため、適用事象は限定される。具体的には、〈1〉得点〈2〉PK〈3〉一発退場〈4〉警告や退場での選手の取り違え――と試合結果を左右しかねない4点のみだ。観客らにはっきり分かるよう、主審は両手で四角(モニター画面のサイン)を描いて伝える。

競技規則を定める国際サッカー評議会(IFAB)によると、世界各地で行われた試験を含む972試合でVARによる遅延は1試合約55秒(中央値)、「明確な間違い」の判定精度は約99%となったという。W杯では、マラドーナ(アルゼンチン)が手を伸ばして決めた1986年メキシコ大会の<神の手ゴール>など歴史に残る場面が数々あったが、誤審の確率は大きく下がるとみられる。

W杯での技術導入は、2014年ブラジル大会で、ゴール成立を機械的に判定する「ゴールライン・テクノロジー」が導入されるなど、近年一気に進んだ。今大会はVARに加え、出場チームがベンチで通信機器を使うことも認められ、観客席からの試合分析が即時に伝えられるようにもなる。

VAR導入は、テレビ中継技術の進歩により、あらゆるピッチ内の場面がカメラに拾われ、世界中に流される現状と無縁ではない。IFABのデービッド・エラリー・テクニカルダイレクターは「VARは、(全てが見られていることで)選手の行動を変え、サッカーの高潔性を改善する可能性を秘めている」と話している。

◆日本 20年導入へテスト中

日本では2020年を目標にVARの導入が検討されている。日本サッカー協会とJリーグは4月からJ1の試合会場で、実際の試合には干渉しない形で審判が経験を積む<オフラインテスト>を始めた。

作業車内でのVARテスト(5月、日産スタジアムで)

テストは、VARと補佐役、映像機器を操作するオペレーターの3人が組んで、スタジアムに駐車した作業車の中で行われている。経験と実績を積んだうえで、ユース年代の大会や天皇杯全日本選手権などの場で、試験導入へと移る計画。将来的にJリーグなどで本格導入するかは、欧州主要リーグの動向を見ながら判断したいとしている。日本協会の小川佳実・審判委員長は「VARとピッチ上の主審とのやり取りや、映像確認のスピードアップなど、導入には入念な準備が必要だ」と話す。国内の日本代表戦では、5月30日のガーナ戦で初めてVARが試験導入された。

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