開幕戦リポート~前評判覆した開催国ロシアの大勝~

1か月に及ぶワールドカップ(W杯)の熱闘が始まった。晴れの本大会にコマを進めた強豪国や注目国の試合ぶりを、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

6月14日 グループA組
ロシア 5-0 サウジアラビア

ロシアが70位、サウジアラビアが67位――。国際サッカー連盟(FIFA)ランキングで出場国中最下位と下から2番目の対決となった開幕戦は、地元の大声援を受けたロシアが5-0という記録的大勝で、グループステージ突破に向けて大きな勝ち点3をつかんだ。

開幕戦で1チームが5点以上を挙げたのは、イタリアが自国開催の1934年大会(当時は開幕日に複数試合)で7得点して以来。開催国は開幕戦で敗れたことがないというW杯の伝統も守られた。

厳しいプレスで球を奪い、素早い攻めに転じるという戦い方が見事にはまった試合だ。その意識が徹底されていただけに、選手間がコンパクトで連動性も生まれる。MFガジンスキーが12分に決めた先制点こそ、相手DFの転倒に助けられた形だが、43分の2点目はMFゴロビンがいち早く球を足元に収めるや次々と後方から選手がフォローし、最後は大外から駆け上がったMFチェリシェフが落ち着き払って蹴り込んだ。

チェリシェフは後半のロスタイムに決めた鮮やかなチーム4点目、自身2点目を「練習でやっていた形」と振り返る。71分にロシアの3点目をヘディングでマークした1メートル96の長身FWジュバが頭で落とすと、それを拾ったチェリシェフが右足アウトサイドにかけて決めた場面。練習ではおそらく、味方に球が渡った際の動き、位置取りなどをしっかりと確認していたのかもしれない。

7万8000人を飲み込んだルジニキ競技場のスタンドでは、ファンが「ロシア、ロシア」と連呼し、貴賓席ではFIFAのインファンティノ会長、この日モスクワ入りしたサウジアラビアのサルマン皇太子と共に観戦したプーチン・ロシア大統領も胸をなでおろしたことだろう。

旧ソ連の時代に1966年大会の4位という実績もあるロシアだが、ここまでは、いばらの道のりだった。昨年10月に韓国を4-2と破った後は強化試合などで7戦勝利がなかった。16年からチームを率いるチェルチェソフ監督は頼りになるベテランの引退や、相次ぐ選手の故障に悩まされ、批判を浴びてきた。大逆風の中で迎えた開幕戦だが、交代出場の選手が3点を記録するという幸運に恵まれた監督は「開幕戦の重圧がかかる中、リラックスして戦ってくれた選手たちに感謝する」と述べた。

W杯での白星は日本と同じグループリーグH組に入った2002年大会以来のことだ。初戦でチュニジアに2-0で勝って迎えた第2戦は、日本のMF稲本にゴールを許して0-1で敗れた。日本がW杯史上初勝利を挙げた横浜国際総合競技場での試合だった。その後はオランダ人のヒディンク、イタリア人のカペッロといった名将を迎えながら、08年の欧州選手権4強入りを除けば、古豪復活はならなかっただけに、開幕戦の快勝で地元ムードは大いに盛り上がっている。

もちろん、まだまだ楽観は許されない。サウジアラビアがロシアの戦い方に解決策を見いだせず、自滅した感もあった。2得点を挙げて開幕戦のMVPに選ばれたチェリシェフも「ここで歩みを止めてはいけない。気を緩めたら大会から追い出されてしまう」と気を引き締める。昨年のコンフェデレーションズ杯でも開幕のニュージーランド戦で2-0と勝ちながら、その後の2連敗で敗退の屈辱を味わった。こうした教訓を生かし、愚直に一つ一つのプレーの精度を高めていくことが必要だろう。第2戦は19日のエジプト戦だ。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。

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