【リポート】メッシのPKも阻まれる~アルゼンチン不本意なスタート

PKを止められたメッシ(ロイター)

1か月に及ぶワールドカップ(W杯)の熱闘が始まった。晴れの本大会にコマを進めた強豪国や注目国の試合ぶりを、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

6月16日 グループD組
アルゼンチン 1-1 アイスランド

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今大会屈指のスター選手であるFWメッシを擁するアルゼンチンが登場。初出 場のアイスランドと1-1で引き分けた。南米の強豪にとって、開幕戦でカメルーンに0-1とまさか の黒星を喫した1990年イタリア大会ほどではないにせよ、今後の戦いを考えると不本意なスタートといえるだろう。

両チームの試合運びは大方の予想通り。アルゼンチンが球をつなぎながら突破口を探り、DF、MFの各4人がしっかりと守りのブロックを築くアイスランドが粘り強くはね返す。アルゼンチンは19分にFWアグエロが決めて幸先のいいスタートを切ったがリードは長く続かず、わずか4分後にFWフィンボガソンに同点ゴールを許した。64分にメッシの蹴ったPKがGKハルドルソンに阻まれた後も、ついに自陣ゴール前で籠城戦の様相となったアイスランドの堅牢な砦を崩せなかった。

守りのヒーローの1人は、間違いなくハルドルソン。メッシのPKを判断良く右に飛んではじき出した。この試合のMVPに選ばれ、「夢が現実になった。メッシのPKは(映像などで)数多く見ていた」としてやったり。サッカー以外にも映像制作に関わっているという34歳の守護神が、大きな仕事をやってのけた。

アルゼンチンで注目されていたのは2つのポイントだ。まず、「監督の仕事は、レオ(メッシの愛称)を中心にチームを組織すること」(サンパオリ監督)という絶対的な大黒柱の力を、いかに最大限に引き出すか。しかし、指揮官は試合後の記者会見で、メッシは「とても居心地が悪そうな状況にあった」と認めざるを得なかった。

アイスランドがゴール前に分厚い守りを敷いたため、メッシに必要なスペースがない。ドリブルで1人、2人は置き去りにしても、ゴールに迫れば迫るほど屈強な長身軍団に行く手をさえぎられてしまう。サンパオリ監督によれば、メッシは「必要なことを全て決断する」という王様の存在。だが、その力を封じられないまでも半減されれば、チームは機能不全に陥る。その意味で、為政者に付き従う従者ではなく、その負担を軽くする副官が欲しいところだろう。

もう1つのポイントは、不安視されていた守備だ。自陣左サイドを簡単に崩された後、左右の揺さぶりについていけず、G・シグルドソンのシュートのこぼれ球を押し込まれた。この1失点はとはいえ、勝ち点3を失う結果になったのだから痛恨の失点だ。心配された守備陣のスピード不足は明らか。アイスランドの巨漢、1メートル86のG・シグルドソンにもペナルティーエリア内でやすやすと巧みなリブル突破を許し、左サイドへ走り込む同選手の対応に遅れる場面も見られた。

このグループではクロアチア、ナイジェリアと息の抜けない相手との対戦が続くアルゼンチン。サンパオリ監督は「われわれには成功するための道具がそろっている」と強がるものの、その道具も使い方を間違える、あるいはさび付いたままでは役目を果たさない。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。

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