【リポート】悲願の8強入りへ~メキシコが虎の子の1点守ってドイツ撃破~

1か月に及ぶワールドカップ(W杯)の熱闘が続いている。晴れの本大会にコマを進めた強豪国や注目国の試合ぶりを、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

6月18日 グループF組

ドイツ 0-1 メキシコ

ドイツ vs メキシコ 試合実況・結果はこちら

35分、ゴールを決めて喜ぶロサノ(右)(17日)=三浦邦彦撮影

メキシコが前回王者のドイツを破る金星で好スタートを切った。35分にカウンターアタックからFWロサノが決めた1点を、堅守で守り切った。

7大会連続16回目のワールドカップ(W杯)出場のメキシコにとって、悲願は決勝トーナメント1回戦突破である。過去に2度、準々決勝に進出したことはあるが、1970、86年といずれも自国開催の大会。94年アメリカ大会からは、6大会連続16強止まりで涙をのんできた。

再挑戦の今大会で、グループリーグ突破の2位は十分な成績ではない。2位で突破すると、8強入りを懸けた決勝トーナメント1回戦は、E組1位が予想される優勝候補ブラジルが立ちはだかる可能性が高いからだ。一方、1位を確保できればブラジルとの対戦を避ける確率も高まり、その先の道のりはいくらか平坦になる。こうしたロードマップを考えれば、価値ある初戦勝利といえるだろう。

昨年6月、W杯のプレ大会としてロシアで行われたコンフェデレーションズ杯準決勝で、メキシコはドイツに1-4の完敗を喫した。それも、主力を国に残し「Bチーム」といわれたドイツに、だ。立ち上がりにディフェンスラインの背後を突かれ、あっという間に2点を奪われていた。

今回の対戦でも開始3分に左サイドでドイツのDFキミヒから背後に走り込んだFWウェルナーにパスが渡る場面があった。シュートは左へ外れて事なきを得たのだが、これが1年前の悪夢を呼び覚ましてくれたのかもしれない。以後はスペースを狭め、ドイツの速い攻めを防いだ。

良い守備ができれば良い攻撃ができる。前がかりになったドイツの隙を突いてカウンターアタックを繰り出す。ドリブル突破や素早いパス交換でプレスをかけに来た相手選手をかわすと、ディフェンディングチャンピオンの守備は簡単にバランスを崩した。オソリオ監督は得点を奪った前半を「われわれが勝っていた。とても賢く守ってくれた」と評価。ドイツのレーウ監督から見れば「前半のプレーは悪かった。いつものような攻撃やパスを仕掛けることができなかった」となる。

ドイツの圧力が強まった後半は、フレッシュな守りの選手を投入し、ディフェンスラインを4人から5人に増やすなど、ち密な用兵で逃げ切った。74分にはW杯5度目の出場となるDFマルケスを起用。39歳の大ベテランは、落ち着いたプレーで守備に貢献した。

一方、値千金の得点をマークしたのは、先発11人中最年少のFWロサノだ。「チームで最も速い選手」(オソリオ監督)は全速で左サイドを駆け上がり、ペナルティーエリアに入って落ち着いてMFエジルをかわし、名GKノイアーと近い方のゴールポストの間を抜くシュートを決めた。W杯初出場の22歳は「これまでの人生で最高のゴール」と初々しい笑顔だった。W杯出場経験者の多い中にあって、こうした新鋭の活躍はチームの勢いに弾みをつけそうだ。

前半、激しく競り合うメキシコのエルナンデス〈14〉とドイツのミュラー〈13〉(17日)=三浦邦彦撮影

「メヒコ(メキシコ)、メヒコ」の大声援でドイツの応援をかき消したメキシコ・サポーターは幸せな一夜を過ごすことだろう。しかし、チームは喜びに浸っているひまはない。続く韓国戦(23日)、スウェーデン戦(27日)で結果を出せなければ、ドイツ戦の勝利も無意味になる。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。

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