【リポート】ブラジル苦しんでの初勝利~後半によみがえった攻撃サッカー

1か月に及ぶワールドカップ(W杯)の熱闘が続いている。強豪国や注目国の試合ぶりを、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

6月22日 グループE組
ブラジル 2-0 コスタリカ

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初戦でスイスと引き分けたブラジルがコスタリカを振り切り、今大会初勝利を挙げた。相手の粘り強い守りに苦しんだが、後半ロスタイムにMFコウチーニョが均衡を破ると、続いてエースのFWネイマールが今大会初得点でダメを押した。ブラジルのワールドカップ(W杯)における勝利は、4年前の自国大会準々決勝、コロンビア戦以来4試合ぶり。前回大会8強のコスタリカはセルビア戦に続く連敗で敗退が決まった。

試合終了間際、後ろから走り込んでゴールを決めるコウチーニョ(左から2人目)(22日)=三浦邦彦撮影

W杯では確実に勝ち点3を計算できる相手などいないことを、改めて思い知らされた一戦だ。ブラジルは完全にコスタリカの術中にはまりかけていた。最終ラインに5人の選手を並べる相手に前半はなかなか決定機をつくることができない。左サイドのネイマールは厳しいマークにあい、右サイドのMFビリアンもミスを連発。そのビリアンをサポートするべき右サイドバックは、ダニアウベスが負傷で参加できず、スイス戦に出場したDFダニーロも故障で、代表経験が少ないDFファグネルを起用せざるを得なかったという事情もあるかもしれない。

こうした苦境を抜け出せた一因は、チチ監督の選手起用だ。「素晴らしい選手を出してくる交代は(われわれにとって)こたえた」とコスタリカのラミレス監督。ドウグラスコスタ、フィルミノというFW陣がピッチに立ち、前者は果敢なドリブルで右サイドの攻撃を活性化し、2点目をアシスト。後者も先制点に絡んだ。何より後半はブラジルらしいパス、ドリブルを織り交ぜた攻撃サッカーが戻ってきた。

ブラジルのネイマール、コウチーニョ、ビリアン、FWガブリエルジェズスの4人は、2006年ドイツ大会のロナウド、ロナウジーニョ、カカ、アドリアーノになぞらえ「魔法のスクエア(四角形)」と呼ばれているそうだ。当時の大会では日本も1-4と完敗したから、そのすごさを記憶している人もいるだろう(アドリアーノは日本戦不出場)。

しかし、相手の堅守をこじ開けられなかった前半のカルテットは物足りなさが残る。今後は対戦相手もコスタリカの戦いに学ぶことがあるだろう。ブラジルの攻撃が真価を問われるのはこれからだ。

ポルトガルに敗れて大会を去ったモロッコも好チームだったが、コスタリカも姿を消すには惜しいチームだ。「守備のプランは持っている。ネイマール、コウチーニョ、ビリアンにはスペースを与えてはいけない」というラミレス監督の言葉通り、FWウレニャを前線に残すだけでがっちり守りを引き締め、ほぼ成功しかけていた。

一部ではチーム内で選手間のいさかいも伝えられていたが、ピッチに立てば一致団結。サッカー王国相手に勇気ある戦いを挑んだ。守備の殻にこもっているだけでなく、チャンスと見るやMFボルヘス、DFガンボアまで相手陣内深く入って得点機をつくる。GKナバスも好守を連発し、欧州クラブ王者レアル・マドリード(スペイン)の守護神にふさわしい活躍を披露した。「質の高いチーム。中盤と守備が非常に強かった」と、この試合のMVPに選ばれたブラジルのコウチーニョもライバルをたたえた。

大会前は新たな積み上げもなく、それほど期待はされていなかったものの、イタリア、ウルグアイなどを破って旋風を巻き起こした4年前の財産を生かして健闘した。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

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