【リポート】調子上げるブラジル~のびのびネイマール~

1か月に及ぶワールドカップ(W杯)の熱闘が続いている。強豪国や注目国の試合ぶりを、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

6月27日 グループE組

セルビア0-2 ブラジル

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グループリーグもいよいよ大詰め。ドイツが韓国に敗れ、前回王者がまさかのグループリーグ敗退となる一方、地元での前回大会準決勝でドイツに1-7の屈辱的敗戦を喫したブラジルは、セルビアに2-0と快勝して1位突破を果たした。

ブラジルが着実に調子を上げていることがうかがえる一戦だった。選手たちは攻守の意識を共有し、一体感があった。勝てばグループリーグ突破が決まるセルビアは、リスク覚悟で最終ラインを押し上げてきた。GKとの間には当然、スペースが生まれる。DFファグネルが「相手がスペースを空けるようなら、われわれの質の高い攻撃陣が得点機をたくさん作るだろう」と話していた通りの状況が生まれた。

36分の先制点も、相手最終ラインの背後にMFコウチーニョが絶妙の球を落とし、MFパウリーニョが押し込んだ。前線の選手は厳しくマークされることが多いが、後方から走り込む選手はつかまえにくい。戦況とパウリーニョの推進力・攻撃力を心得た組み立てだった。

先制ゴールを決めたパウリーニョ(15)と喜び合うブラジルの選手たち(AP)

後半は攻撃の圧力を増してきたセルビアに対し、高い守備意識で対応した。FWガブリエルジェズスはペナルティーエリアに戻って懸命に競り合っていたし、FWネイマール、MFビリアンも自陣に引いて味方をサポートした。攻撃では選手のひらめきを尊重する一方、守備では献身といった規律を重視し、「サッカーではバランスが重要」というチチ監督の考えを全員で体現していた。

そして、エースのネイマールものびのびとプレーした感があり、復活しつつある印象だ。常に期待される得点こそなかったものの、正確なCKで68分にDFチアゴシウバがヘディングで決めた2点目をアシスト。自らの突破あり、周囲との連係ありと、高い技術を駆使して攻撃をリードした。5日前のコスタリカ戦後、「次の試合で最高の状態に戻るよ」と話していたチチ監督の予想通り、心配された右足で何度もシュートを放つなど、今年2月のリーグ戦での故障から約3か月離脱した影響を感じさせないプレーを披露した。

◆セルビアは若手の今後に期待

セルビアは分裂前のユーゴスラビア時代に「欧州のブラジル」と呼ばれていた。名古屋での活躍がおなじみのストイコビッチもセルビアの出身だ。ブラジル戦でもタディッチ、ミリンコビッチサビッチらのMF陣が巧みなボールさばきを見せて、後半には攻勢の時間帯もあった。

だが、さすがにペナルティーエリア内の密集地帯で集中したブラジルの守備を完全に崩すのは難しく、先発11人の平均身長が1メートル88(ブラジルは1メートル79)という高さも生かせなかった。それでも、チームにはミリンコビッチサビッチ(23)、DFベリコビッチ(22)といった、2015年の20歳以下ワールドカップ(W杯)決勝でブラジルを破って優勝したメンバーが5人含まれており、今後への期待を抱かせた。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

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