【日本戦リポート】川島、渾身のセーブ~指揮官の期待にこたえた35歳~

1か月に及ぶワールドカップ(W杯)の熱闘が続いている。強豪国や注目国の試合ぶりを、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

6月28日 グループH組

日本0-1 ポーランド

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敗戦でのグループリーグ勝ち上がりという日本の前代未聞の結末には、違和感を禁じえない。賛否両論もあるだろうが、ここは素直にグループリーグ突破を喜びたい。国内では少なくとも7月2日の決勝トーナメント1回戦まで、日本代表への関心を引き付けることができる。日本のポーランド戦前日には、韓国が前回王者のドイツを倒すという快挙を成し遂げたが、5チームが出場したアジアから16強に名を連ねたのは日本だけだ。そして、選手たちはW杯という高い舞台で、確実にあと1試合は強豪相手に経験を積める。

「納得がいかない」「不本意」。試合後の記者会見場で西野監督は絞り出すように言った。「勝ちにいくスピリットを持ってピッチに出てくれ」と選手たちを送り出した指揮官にしてみれば、負けを容認する試合運びは確かに「苦渋の決断」だっただろう。しかし、同時刻に始まったコロンビア対セネガルの動向をにらみながら、目の前の状況にも決断を下す全責任を一身に負わなければならない。一歩誤れば奈落の底、という綱渡りでチームを向こう岸に導いた西野監督の手腕と精神力に敬意を表したい。

その監督の期待に応えた一人がGK川島だ。第1、2戦での失点に批判が集まり、西野監督もセネガル戦後、「しっかり分析しないといけない」と交代の可能性もにおわせていた。だが、2010年南アフリカ大会から3大会連続で日本のゴールを守っている守護神は「前の試合より次の試合で何ができるか」と強気に前を向いた。

そして32分、ゴール左隅に飛んだポーランドMFグロシツキのヘディングシュートを、ゴールから右手一本でかき出す渾身のセーブ。ポーランドのナバウカ監督が「前半で得点できたのに」と振り返ったのは、このシーンだ。さらに後半に入って53分には、カウンター攻撃からグロシツキの中央への折り返しを、素早く飛び出してキャッチ。「しっかり仕事ができて良かった」と胸をなで下ろしたチーム最年長の35歳にとって、自信を取り戻すきっかけになればいい。

前半、ポーランドのシュートを右手1本で防ぐGK川島(28日、ロシア・ボルゴグラードで)=稲垣政則撮影

グループリーグ突破は一つの目標達成だが、引き分ければ楽に自力で勝ち抜ける状況を、ここまで難しくしてしまったことも事実だ。59分のFKからの失点場面でも、選手間でどのような決め事があり、ピッチ上でどのような会話があったのか分からないが、ゴールを決めたDFベドナルクを完全にフリーにしてしまった。それまでポーランドの今大会唯一の得点も、セネガルとの初戦でFKからMFクリホビアクがヘディングで決めたものだった。

ゴール近くでの反則にも注意は必要だ。66分にはDF槙野がペナルティーエリア付近でFWレバンドフスキを倒し、FKを与えただけでなく警告も受けた。史上初のW杯8強入りを懸けて戦う相手は、優勝候補の一角にも挙げられるベルギーに決まった。わずかな隙も見逃さない選手たちがそろうチームだけに、ポーランド戦を教訓としつつ、堂々と戦いを挑んでほしい。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

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