【リポート】「サッカーのやり方忘れた?」~スペイン復活ならず~

ワールドカップ(W杯)は決勝トーナメントが始まった。注目カードを中心に、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

7月1日 決勝トーナメント1回戦

スペイン1-1 ロシア

スペイン対 ロシア 試合データ・結果はこちら

延長戦を含む120分間からPK戦にもつれ込む死闘で涙をのんだスペイン。準々決勝進出はならなかった。

ワールドカップ(W杯)2010年南アフリカ大会で初優勝を成し遂げ、その前後の08、12年の欧州選手権にも優勝したスペインは、同国が16世紀につくった強力な海軍になぞらえ、「無敵艦隊」の名をほしいままにした。しかし、連覇を狙った前回ブラジル大会でグループリーグ敗退後、復権を狙った今大会も決勝トーナメント1回戦止まり。ついに浮上はならなかった。

PK戦で敗退が決まりうなだれるスペイン選手(ロイター)

持ち前の技術の高さを生かし、個人技やテンポのいい変幻自在のパスワークなどで、世界のサッカーのお手本となった。ところが、その世界のサッカーは最先端の戦術やフォーメーションへの対策を練り、それを上回ろうとすることで進歩してきた。

現在は映像やデータなどを活用したテクノロジーも進化し、さまざまな角度から対戦相手を丸裸にしようとする。特にレアル・マドリード、バルセロナ、アトレチコ・マドリードといった、チャンピオンズリーグなど近年の欧州カップ戦で主役を演じているビッグクラブの選手たちぞろいのスペインの選手たちは誰もが知る存在だ。当然、研究は行き届く。

ロシアは先発11人が、決してレベルが高いとはいえない国内クラブの選手たち。個々の能力では勝てないと見たか、強力な艦隊の来襲を前に、まずは守りを固める策を採用した。守りに入ると最終ラインが5人となるロシアを相手に、スペインは圧倒的にボールを支配しながらゴールが遠かった。試合前日の記者会見でFWシルバは「後方から早く球が出れば、前線にスペースができる」と話したものの、分厚い守備を前に横パスを繰り返すばかり。12分の先制点はFKで相手オウンゴールを誘ったものだ。

今大会でもすでに、守りを固める相手に強豪が苦戦する姿をさんざん目にしてきた。メキシコに敗れたドイツ、ロスタイムの得点で辛くもコスタリカを振り切ったブラジルもそうだった。

Jリーグの神戸入りするMFイニエスタは67分に交代出場。彼が公式試合でベンチスタートとなるのは、8年前の南アフリカ大会のホンジュラス戦以来だ。しかし、彼がピッチに立つとMFイスコとのコンビネーションや、かかとを使った意表を突くパスで、得点への期待は高まった。もう少し早く投入していれば、という気もしたが、それは結果論になってしまう。

大会直前のロペテギ監督解任の影響があったのかどうか、それも分からない。ただ、グループリーグでは3試合で5失点。軽率なミスで失点したり、空中戦に強いはずのDFセルヒオラモスが競り負けてヘディングで得点を許したりと、ぴりっとしなかった。自慢のパスワークも影を潜め、自国メディア(電子版)は「スペイン代表はサッカーのやり方を忘れてしまった」と批判した。

スペインの黄金時代を支えてきたイニエスタはロシア戦終了後に代表引退を表明し、セルヒオラモス、DFピケ、FWシルバらはいずれも30歳を超えて、今後の代表における去就は定かでない。今大会開幕の前日に指揮を任されたイエロ監督についても同じである。もちろん、次代を担うべき才能ある選手は控えている。だが、この日の試合を見る限り、洋々たる前途が開けているとは言い難い。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

 

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