【日本戦リポート】ベルギーから見た「2点ビハインド」

ワールドカップ(W杯)は決勝トーナメント1回戦が終わり、8強チームが出そろった。注目カードを中心に、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

7月2日 決勝トーナメント1回戦

ベルギー3-2 日本

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2点のビハインドを跳ね返すと、後半ロスタイムで日本を奈落の底に突き落としたベルギーの粘りはすごかった。日本の戦いぶりに注目が集まったが、「赤い悪魔」こと、ベルギーはどのように戦ったのだろうか。

74分、フェライニ〈8〉に同点のヘディングシュートを決められる=宇那木健一撮影

国内メディアのHet Nieuwsblad(電子版)によると、両チーム無得点で前半を終えた後、ロッカールームでは「押していけばだいじょうぶ。得点すれば難しい状況は終わる」(MFムニエ)と選手たちは励まし合っていたそうだ。ところが後半開始から間もなく、日本が2点を連取。「何が起こったのかと思った」とムニエ。

後半半ばまでの時間帯は、完全にベルギーに逆風だった。先制された直後の49分にはMFのE・アザールのシュートがゴールポストをたたき、62分にはFWルカクの至近距離からのヘディングシュートが左に外れる。ミスも目立ち、E・アザールは味方のパスミスに不満の意を示した。

ところが、65分の2人の選手交代が的中する。1メートル69のFWメルテンスに代わり、1メートル94のMFフェライニが入った。すると、その4分後にDFフェルトンゲンが1点を返すと、さらに5分後、フェライニがアフロヘアを一振りして同点。彼と同時にピッチに立ったMFシャドリがロスタイム4分に千金の逆転ゴールを決めた。

ムニエは日本の試合運びにも言及する。「2点をリードしたにもかかわらず、彼らが前がかりになって(われわれの攻撃のための)スペースを空けたのには驚いた」。西野監督が「3点目を、という気持ちは強くあった」という時間帯だ。ベルギーは予想外に訪れたチャンスをつかんで離さなかった。

西野監督は、この試合の日本とベルギーの間には「わずかな差」しかなかったと言う。その差が何かを言葉で説明するのは難しく、ベルギーのマルティネス監督の勝因分析も「選手たちの資質、集中力、強い気持ち、絶対に諦めないという姿勢」と抽象的な言葉が並ぶ。「負けたら(ベルギーの首都)ブリュッセルに戻れない」(国内メディアのLE SOIR=電子版)という崖っぷちの気持ちもあった。

E・アザールは「2年前の欧州選手権のことが頭に浮かんだ」という。準々決勝でウェールズと対戦したベルギーは、先制しながら1-3で逆転負け。だから「点を取れば試合は動く」という教訓があった。日本戦の先発11人のうち、彼をはじめGKクルトワ、FWルカクら8人がウェールズ戦に出場していた。

トップレベルでの経験不足が指摘される日本の場合、チームとして真剣勝負に臨む機会は、4年に一度のW杯ぐらいしかない。となれば、まずは個の力を高めるしかないだろう。欧州のクラブに所属する選手が出場機会を増やし、さらには欧州カップ戦でも活躍できるようにならなければいけない。それはJリーグ、日本の選手育成ともつながっていることを、この機会に再認識したい。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

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