【リポート】鬼門のPK戦~ジンクス破ったイングランド~

ワールドカップ(W杯)は決勝トーナメント1回戦が終わり、準々決勝に進む8強が出そろった。注目カードを中心に、海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

7月3日 決勝トーナメント1回戦
コロンビア 1-1 イングランド
(PK4-3 イングランド)

コロンビア 対 イングランド 試合データ・結果はこちら

120分間でも決着がつかず、PK戦を4-3で制したイングランドが2006年ドイツ大会以来の8強入りを果たした。

57分、今大会6得点目となる先制のPKを決め、喜ぶイングランドのケーン(中央)=三浦邦彦撮影

先制しながら90分の終了直前に追い付かれ、延長戦でも決着がつかずに終わると、「また、この時が来たか」という思いだった。イングランドはとにかくPK戦に弱いことで定評がある。W杯、欧州選手権というメジャー大会で、1勝6敗と負け越し。W杯では1990、98、2006年の大会でPK戦負けして敗退している。私もその3度に立ち会い、不思議で仕方がなかった。そして毎回、失敗した選手が「戦犯」とされて、その後のリーグ戦でブーイングを受け、次のPK戦で「後継者」が出るまで、何かといえば名前が上がる存在となる。

サウスゲート監督も1996年欧州選手権準決勝で失敗した「実績」があり、この時はイングランド開催だったから、長く尾を引いた。そんな背景もあってか、現代表はわざわざセンターサークルから歩いてPKスポットまで行き、実際の場面に近い状況を作ったり、精神分析の専門家にアドレスを受けたりと、万全の準備でロシアに乗り込み、見事に結果を出したわけである。

若い選手が多いチームがジンクスを破り、メジャー大会の決勝トーナメントで勝ったのは、12年ぶりとなった。準々決勝で顔を合わせるのはスウェーデン。トーナメント表のイングランド側に残っている他チームは、国際サッカー連盟(FIFA)ランキングがイングランド(12位)より下のクロアチア(20位)、スウェーデン(24位)、ロシア(70位)だ。がぜん、国内では「決勝への道が見えた」と期待が高まっているようである。

もちろん、楽観はできない。日本と同様、コロンビア戦をしっかり90分で勝ちきることができなかった。そのあたりに若さと甘さがのぞく。下克上が目立つ今大会、この先もしっかり地に足をつけて戦えるか。

コロンビアはMFロドリゲスの負傷回復が間に合わなかった。エースが出場したり、しなかったり。そんな不安定な状況が、チームに微妙な影を落としていたように思う。主審への抗議や小競り合い、荒っぽいプレーなどで、この試合だけで6枚のイエローカードをもらった。

その中で、DFのミナ、D・サンチェスというセンターバックコンビの奮戦は素晴らしかった。それぞれ23歳と22歳。ミナは1メートル94の長身を生かして、この日の同点ゴールを含みチーム最多3得点と、攻撃でも大活躍。D・サンチェスも、普段はトットナム(イングランド)でチームメートである相手エースのFWケーンらを向こうに回して、クロスをはね返し続けた。こういう若いセンターバックが守備の要として存在感を発揮しているのはうらやましい。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

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