【リポート】2試合連続120分の死闘~地元ロシアは力尽きる~

ワールドカップ(W杯)は準々決勝が終わり、すべて欧州勢が準決勝進出を決めた。大会はいよいよ大詰め。海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

ロシア対クロアチア・延長前半、チーム2点目のゴールを決め喜ぶクロアチアのビダ〈21〉(7日、ロシア・ソチで)=三浦邦彦撮影

7月7日 準々決勝
ロシア 2-2 クロアチア(PK4-3 クロアチア)
ロシア 対クロアチア 試合データ・結果はこちら

PK戦を制したクロアチアが、地元ロシアを下し、初出場の1998年フランス大会以来となる4強入りを果たした。

前夜のブラジル対ベルギー戦のように、世界トップクラスが技術の粋を発揮して競うのがW杯の魅力。だが、それより技術レベルが劣るところがあって、「美しい試合ではなかった」(クロアチアのダリッチ監督)としても、国の威信を懸け、4強という1つの歴史を作ろうと全力を出し尽くす戦いも、W杯の醍醐味といえるだろう。何よりも、両者の精神力がすごかった。

両チーム共に延長戦、PK戦の決着となった決勝トーナメント1回戦から中5日での一戦。できれば2試合連続の延長戦は避けたかったろう。両者とも後半に勝負を懸けた。クロアチアは63分に守備的MFブロゾビッチを投入して、それまで中盤の深い位置でプレーしていたMFのモドリッチとラキティッチのポジションを前方に移した。得点力もある彼らをより積極的に、攻撃に絡ませるためだろう。

それならば、といわんばかりに、ロシアも67分、見事なミドルシュートで先制点を挙げたMFチェリシェフに代えて、FWスモロフを起用。FWジュバと共に2人の長身ストライカーで、クロアチア守備陣に対する圧力を増し、力勝負に出た格好だ。

このあたりが駆け引きというか、意地の張り合いというか、ベンチワークも楽しめた。クロアチアは特に選手の消耗が激しく、負傷による選手交代の可能性も考えながら、ダリッチ監督は綱渡りのような状態での采配だった。PK戦後はその緊張から解放されての涙だったのだろうか。

1-1で延長戦に突入しての得点も、こうした状態を反映してか、クロアチアはCK、ロシアはFKと、セットプレーによるもの。2試合連続の延長戦ともなれば、集中力に隙が生まれてもおかしくない。

PK戦はあれこれ言っても始まらない。ホームの大声援を受けるロシア選手も、ブーイングを浴びせられるクロアチア選手も、強じんな精神力が要求される場に立つだけで称賛に値する。なお、クロアチアの2試合連続PK戦勝ちは、1990年大会のアルゼンチン以来だった。

中3日で迎える準決勝のイングランド戦に向けて、コンディション面で不安が残るクロアチアだが、「時間は十分ある。しっかり準備して楽しむよ」とモドリッチ。決勝進出という新たな歴史を作れるか注目したい。

一方、ロシアの夏は終わった。出場32チームの中で国際サッカー連盟(FIFA)ランキングが最下位。あまり期待はされていなかったが、8強入りで開催国の責任は果たした。決勝トーナメント1回戦でスペインを下した夜は、地下鉄が停車したどの駅でも「ロシア、ロシア」と歓喜の連呼が構内に響いていた。チェルチェソフ監督も「人々がわれわれを愛するようになった」と胸を張った。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら。

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