【リポート】動いたベルギー、堅実な仏~監督采配に一日の長

ワールドカップ(W杯)は準決勝が始まった。大会はいよいよ大詰め。海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

後半、シュートを放つフランスのジルー(右はベルギーのコンパニー)=三浦邦彦撮影

7月10日 準決勝

フランス 1-0 ベルギー

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フランスの左サイド、ベルギーの右サイドの攻防が明暗を分けた試合だった。ベルギーはウイングバックのDFムニエが警告累積で出場停止。代わりに決勝トーナメント1回戦の日本戦や準々決勝のブラジル戦で左サイドを務めたMFシャドリを配した。ただし、攻撃の際は相手陣内深くまで前進するが、相手が球を保持すると右サイドバックのような位置で、ディフェンスラインは3人から4人に増えるやや変則的なシステム。柔軟なフォーメーションともいえるが、攻守の役割が中途半端になるリスクもはらんでいた。

前半のベルギーは、何度もシャドリにパスを送り、MFデブルイネとのコンビネーションで突破口を開こうとした。しかし、フランスもMFマチュイディ、DFエルナンデスがうまく対応してチャンスを作らせない。ハーフタイムには記者席のモニターに、デブルイネとシャドリが話し合いながらピッチに向かう姿が映った。後半はデブルイネが中央に動き、シャドリとエルナンデスが1対1になるような状況を作ったように見えた。

しかし、シャドリには突破して局面を開くような意図がうかがえなかった。そうこうするうちに、帰陣が遅れたシャドリが背後へのマチュイディの走り込みを許し、エルナンデスの縦パスが通って中央へ折り返し。これをFWジルーがシュートし、ベルギーDFコンパニーに当たって、決勝点を呼び込むCKにつながった。

同点ゴールを目指し、ベルギーのマルティネス監督はさまざまな手を打った。FWのE・アザールを左サイドからトップ下に移し、デブルイネのポジションを後方に下げた。MFフェライニを左サイドで出したと思ったら、ここが定位置のMFカラスコと交代させたり。だが、6分間のロスタイムをもらっても、ついにフランスの堅陣は崩せなかった。

決勝進出を決めて喜ぶデシャン監督=三浦邦彦撮影

一方、フランスのデシャン監督はどっしり構え、手堅い采配を貫いた。4人のディフェンスラインの前にはハードワークのできるポグバ、カンテ、マチュイディのMF陣。リードを守る態勢に入れば、最前線のジルーを球の奪取に優れたMFヌゾンジと代えて守備固め。石橋をたたいて渡るような戦いで、決勝進出を手繰り寄せた。

フランスは4年前のW杯で準々決勝敗退。2年前には地元開催の欧州選手権で決勝に進みながら、ポルトガルに敗れて優勝を逃している。悔しい経験の積み重ねがあったからか、「選手たちは2年前、4年前よりも成長している」とデシャン監督。それは、難しい試合にあっても動じない守備的MFだった選手時代同様の手堅さを身上とする監督自身の成長ともいえるだろう。

ベルギーのマルティネス監督は「勝敗を分けたのは1つのセットプレー」と言うが、国際大会で初めて指揮を執った同監督と、選手としても指導者としても経験豊富なデシャン監督の間には、目に見えぬ大きな差があったように感じた。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

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