【リポート】歴史を作ったクロアチアと歴史を作れなかったイングランド

ワールドカップ(W杯)は準決勝2試合目が終わり、決勝カードが決まった。海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

7月11日 準決勝

クロアチア 2ー1 イングランド

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ワールドカップ(W杯)ロシア大会は残る1つの準決勝が行われ、クロアチアが延長戦の末にイングランドを逆転で2-1と下し、15日の決勝でフランスと対戦することが決まった。敗れたイングランドは14日の3位決定戦でベルギーと戦う。

歴史を作った者たちと、歴史を作れなかった者たちの姿は、あまりにも対照的だった。試合終了の笛が鳴り響いた瞬間、史上初の決勝進出を成し遂げたクロアチアの選手たちは歓喜をはじかせた一方、進出すれば優勝した1966年の自国開催大会以来となっていたイングランドの選手たちは、芝生の上に倒れ込んだ。

イングランド 準決勝 敗退 

クロアチアに負けて決勝進出を逃し、肩を落とすイングランド代表の選手たち(中央右はサウスゲート監督)(11日)=三浦邦彦撮影

クロアチアの快挙は決勝トーナメント1回戦のデンマーク戦、準々決勝のロシア戦に続く3試合連続の延長戦を戦い抜いた末に達成されただけに、驚嘆するしかない。W杯の歴史に残る出来事だろう。

初出場の98年フランス大会は、ユーゴスラビアの内戦が終結して間もないころで、新しく生まれた自分たちの国をアピールしたいという意欲も推進力となり、3位の好成績を残した。もちろん、得点王となったシュケル、ボバン、アサノビッチといった名手がそろい、それにふさわしい実力はあった。グループリーグでやはり初出場の日本も戦い、シュケルに決勝点を奪われて0-1と敗れた試合を覚えている方も多いだろう。

その得点も日本のわずかな隙を見逃さなかったものだった。以来20年たって国を知ってもらいたいという使命感は薄れたかもしれないが、試合巧者ぶりは脈々と生きていた。

クロアチア 準決勝 決勝進出

イングランドを破って決勝進出を決め、笑顔を見せるクロアチアのモドリッチら(11日)=三浦邦彦撮影

開始5分にFKで先制を許した後は、その反則を犯したエースのMFモドリッチをはじめミスを連発。試合の流れはイングランドに傾いていた。しかし1点差なら、先行されたデンマーク戦やロシア戦のように、追いつく自信があったのだろう。落ち着いて球を保持してペースをつかみ、前半はほとんど相手陣内深く入り込めなかった右サイドのDFブルサリコに次第に球が集まるようになった。これはクロアチアの攻撃パターンの1つ。そのブルサリコのクロスから、68分にFWペリシッチの同点ゴールが生まれた。

これでクロアチアは完全に息を吹き返した。その後もペリシッチやFWマンジュキッチにチャンスが訪れるなど、得点の予感はクロアチアに多かった。そのマンジュキッチが109分に決めた逆転ゴールも、抜け目ないストライカーの嗅覚そのものだった。

クロアチアは、常にトップクラスのスター選手を生み出していたり、国際大会で上位の常連であったりというわけではない。だから、チャンスが訪れたときには、全力でそれをつかみにいく。「クロアチアのような小国にとって、この試合に何が懸かり、準決勝がいかに重要かをわれわれは分かっていた」とペリシッチ。だから、わずかなチャンスも逃さない「(クロアチアの)気質を示した」(ペリシッチ)。ダリッチ監督によれば、延長戦を前にしても「誰も交代させられたくなかった」という。

決勝では、20年前の準決勝で負かされたフランスが待ち受ける。3試合連続の延長戦の後に臨むという過酷な条件だが、その逆境をどのように克服するかが楽しみだ。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら

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