【リポート】職人ストライカーには受難の時代?~ケーンは得点伸ばせず

ワールドカップ(W杯)は3位決定戦が行われ、ベルギーがイングランドを破って同国史上最高の成績で大会を終えた。海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

7月14日 3位決定戦

ベルギー 2ー0 イングランド

ベルギーが快勝したこの一戦には、個人賞の興味もあった。現在はゴールデンブーツ賞として表彰される得点王だ。準決勝を終えて、イングランドのFWケーンが6点で首位。これをベルギーのFWルカクが4点で追っていたが、結果は両者とも無得点に終わった。

ケーンの得点を見ると、6点中3点をPKで決めている。また、5点は強豪とはいえないチュニジアとパナマから挙げたもの。準々決勝、準決勝、3位決定戦は不発で、物足りなさが残った。得点王というと、どうしても重要な試合でゴールをもぎ取り、チームに勝利をもたらすというイメージが理想としてあるからだ。

もちろん、ケーンにいい球が渡らなかったという側面も無視できない。彼はゴール前で待ち構えるタイプではなく、ペナルティーエリアの外で球を引き出しながら、味方のためにスペースを作る動きも目立った。だが、いいパス、クロスが来なければ、シュートに持ち込めない。国際サッカー連盟(FIFA)のデータによれば、ケーンが6試合で放ったシュートは14本。これが強引にでもシュートに持ち込むようなタイプのネイマール(ブラジル)は5試合で27本、ロナルド(ポルトガル)は4試合で21本になる。

今大会でクローズアップされたセットプレーの際もそうだ。イングランドのFK、CKは、まずストーンズ、マグワイアといった長身DFの頭をめがけて蹴り込んでくる。ケーンはリバウンド、こぼれ球狙いだ。要するに、今大会のケーンはエゴイストではなく、キャプテンとしてチームのバランスに配慮したようにも感じた。あるいは、むやみにゴール前で勝負しても無理があると判断したのかもしれない。

こぼれ球を仕留めるにしても、現代のペナルティーエリア内は人口密度が高い。今大会を見ても、球を1度止めて打つシュートは、まず相手の体を張ったブロックに遭っている。チームの上下格差も縮まり、隙がなくなっている。70年大会で得点王となったG・ミュラー(西ドイツ)、同じく86年大会のリネカー(イングランド)のようなエリア内の職人は、W杯のような短期集中の大会では、絶滅する環境になったようだ。

では、ベルギーのルカクはどうだったのか。実際、ケーンに追い付けるだけの絶好機は2度訪れた。だが、いずれも球のコントロールに繊細さを欠いて、シュートにも至らなかった。マルティネス監督も、もはやこれまでとばかり、60分にはルカクを引っ込めてしまった。決勝トーナメントでは、4試合でノーゴール。同1回戦の日本戦でもシュートミス。期待されながらも、たいしたインパクトは残せずに終わってしまった。

さて、大会も残るは決勝戦を残すのみとなった。フランス、クロアチアの両チームの中では、フランスのFW、グリーズマンとエムバペが3点だから、ケーンを抜くのはかなり難しいだろう。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。

 

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