【決勝リポート】失敗体験から学んだフランス~ぶれなかった守備への意識

ワールドカップ(W杯)は決勝でフランスがクロアチアを破って5大会ぶり2度目の優勝を飾った。海外サッカーの豊富な取材経験を持つライターの石川聡さんが現地からリポートする。

7月15日 決勝

フランス 4ー2 クロアチア

優勝トロフィーを掲げ、喜びを爆発させるフランスの選手ら=三浦邦彦撮影

フランスに準決勝で敗れたベルギーのFW、E・アザールは、対戦相手の戦いぶりに「守備的」と苦言を呈したらしい。しかし、その守備を前に得点を取れなかったのだから、「驚くべき守備の堅さ」とリスペクトすべきだろう。

確かに守備は堅固だ。1メートル80台が並ぶ4人のディフェンスライン、その前には球を奪うことにたけたMFを3人配している。この7人で敷く守備網は、そこに侵入してくる相手を巧みに絡め取ってしまう。

もちろん、W杯優勝は攻撃力なしには考えられない。決勝トーナメント1回戦でアルゼンチンに3点、決勝のクロアチア戦で2点を献上したが、それを上回るだけの得点力は十分に秘めているのだ。決勝は6割以上、クロアチアに球を保持されたが、FWグリーズマンやMFポグバなどキープ力のある選手をそろえているのだから、もっと自分たちから攻撃を仕掛けることも可能に違いない。

だが、今回のフランスで注目したいのは、このようなスタイルを確立するに至った4年間の歩みだろう。さまざまな失敗体験が、チームを成長させてきたように思う。一つの例が守備の要のDFバラン。ドイツに0-1で敗れた4年前のブラジル大会準々決勝。FKの場面で彼は不安定な守備でドイツのDFフンメルスに競り負け、その1点でチームは敗退した。そんなバランが、今や空中戦で絶対的な強さを誇り、逆に今大会準々決勝のウルグアイ戦のように、ヘディングで得点も決めている。

チームもそうだ。2年前に地元で開催した欧州選手権で当時世界王者のドイツに雪辱し、「有頂天になってしまった。決勝はただプレーするだけでいいと考えていた」とポグバ。ところがポルトガルにまさかの敗戦で現実を思い知らされた。

今大会準決勝でベルギーに勝った後、選手たちは喜んだそうだが、そこでポグバが「われわれはまだ何も成し遂げていない。喜ぶのは決勝で勝ってからにしよう」と諭したという。そうした選手たちの姿勢を頼もしく思ったのだろう。デシャン監督はその後の記者会見で「彼らは2年前より、4年前より、強くなった」と成長ぶりを認めた。

◆早めの選手交代もピタリ

采配がさえたデシャン監督=宇那木健一撮影

勝利へのアプローチは監督の采配にも表れていた。55分にMFカンテをMFヌゾンジと交代させた。カンテはクロアチアが1-1とした28分の場面で、FWペリシッチにかわされてシュートを許していたし、その直前には警告も受けていた。カンテをそのままプレーさせるのに、不安を感じたのかもしれない。傷を大きくしないうちに、早めの手当てをした印象だ。

そして、強い精神力が要求される守備を貫徹するために、デシャン監督はチームの和を重視した。「監督の仕事の一つは、選手の精神面の管理」と言う監督は、「集団としての話も、個人的な話も聞くようにした」。チームは大会前から「55日間、一緒に過ごしたが、何も問題はなかった」というほどの一体感を醸成した。決勝後の監督記者会見が始まろうとしたとき、突然、7、8人の選手が乱入。監督の名をリズムに乗せて連呼しながら踊り、ペットボトルの水などをまき散らしながら大はしゃぎ。指揮官と選手とのきずながうかがえるシーンだった。

グループリーグでオーストラリアに2-1、ペルーに1-0、デンマークに0-0という優勝候補らしからぬ戦いも、国内で批判された。だが、しっかりした準備に裏打ちされたチームへの自信は揺るぎなかった。監督自身もこのスタイルに疑問を持たれていることを知っている。「フランスが美しいチャンピオンかって? そう、われわれが世界チャンピオンだ。これからの4年間は、フランスが世界の頂点にいる」と、これまで果たしてきた仕事に対する自負をのぞかせた。

プロフィル  石川 聡

いしかわ・あきら 1956年生まれ。大学卒業後にサッカー専門誌編集部で海外サッカーを担当。その後、トヨタカップ、日本代表戦などの大会プログラム編集、執筆に携わる。W杯は1982年スペイン大会から続けて取材し、今回が10回目。過去のリポートはこちら。

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