イメージ覆したW杯…「ロシアへの偏見変えた」

準決勝翌日の12日、サンクトペテルブルクの繁華街で、約3メートル四方の画面に人だかりができていた。次の開催地カタールの街角が中継されている。ドーハにも同じ装置が置かれ、ロシアのW杯ファンの姿も届く。画面を挟んで双方の通行人が手を振り合った。

情報技術(IT)の発達で、世界の距離は縮まった。広大なロシアの移動も宿もスマートフォンで手配できる。公共交通の大半はファンに無料化され、英語の道案内も随分と増えた。翻訳アプリも交流をつなぐ。

国際サッカー連盟(FIFA)によると、平均入場者数は約4万7000人。外国人観戦客は、南北のアメリカ大陸やアジアからが多く、入国ビザ代わりの「ファンID」を持たせるチケット販売の新手法も快調だった。南アフリカ大会などで問題になった空席率は2%程度に抑え、不正転売やフーリガンなどの対策にも役立った。

ロシア代表の躍進もあり、11都市のファンフェストは700万人を動員。空港や駅、市街地でもボランティアが笑顔と寛容さで多国籍のファンを迎えた。4年前に続きボランティアで参加したブラジル人女性(40)は「ロシアの鉄道網はブラジルより格段に整っているし、大会運営もファンサービスも、きっちりしていた」と話す。

「ファンの誰もが、ロシアの美しさや、従来のイメージと違う実像を伝えたい人々と出会った。W杯がロシアへの偏見を変えた」とFIFAのインファンティノ会長。13日の記者会見にボランティアのユニホーム姿で現れ、彼らへの謝意を示した。

ITが国境を消していくようなボーダーレス化に、旧共産圏のロシアも歩調を合わせ、舞台装置を整えた。同時に、人と人との間で生まれる魅力も、確かに感じ取れた。ドーピング問題などで失った信頼や威信を取り戻す好機を、ロシアは生かした。メガイベントの受け皿として、現代的な範を示した努力とオープンな姿勢が、一過性のもので終わらないことを願う。(青柳庸介)

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