日本の誇り取り戻す~吉田麻也

サッカーの第21回ワールドカップ(W杯)ロシア大会は6月14日に開幕、7月15日の決勝まで64試合がモスクワをはじめとする11都市12会場で繰り広げられる。6大会連続6度目の出場となる日本にとっては、1勝もできなかった前回ブラジル大会からの再起を期す戦い。コロンビア、セネガル、ポーランドという個性派がそろったグループリーグH組を勝ち抜けるか、ハリルホジッチ監督が植え付けてきた<デュエル(ボール争奪での激しさ)>の真価が試される。

◆守備の要 勝利に全てを

前回ブラジル大会の悔しさを胸に日本のDFリーダーに成長した吉田麻也(29)(サウサンプトン)は、危機感を隠そうともせずに言い切る。「予選の苦しい状況を乗り越えて強くなったと思うけれど、W杯で勝つためにはまだまだ足りない。勝つための準備が必要」。強い口調に決意を込めた。

W杯に初出場した前回、全3試合で先発のピッチに立った。しかし、そこで痛感したのは自らの無力さ。特に、決勝トーナメント進出がかかったコロンビアとの第3戦では、現在、バイエルン・ミュンヘン(独)で活躍するMFロドリゲスらを前に、なすすべなく4点を奪われて大会を去った。「大舞台で、もっとチームの役に立てる選手になる」と誓った言葉を片時も忘れたことはない。

サウサンプトンで出場機会を増やし、並み居る世界的ストライカーたちと対峙(たいじ)し続けて、2017年4月には日本人で初めてプレミアリーグ通算100試合出場を達成。代表でもアジア最終予選でただ一人、全10試合にフル出場し、MF長谷部(フランクフルト)が不在の時にはキャプテンマークも巻いた。「立場は変わったが、目指すところは一緒」。心技体、全てを磨いてきたのは勝利のため。努力の答えはロシアにある。(崎田良介)

 

◇吉田麻也(Maya Yoshida) 1メートル89、78キロ 日本代表80試合出場、10得点

吉田麻也(2017年11月)

◆「選手よ、果敢に挑め」 ハリルホジッチ監督

W杯イヤーを迎え、日本のハリルホジッチ監督は、グループリーグで対戦するコロンビア、セネガル、ポーランドの分析を本格化させる。「それぞれ特徴が違い、強みと弱点がある。4年間の映像をチェックしたい」。戦術家らしく、相手を丸裸にして勝機を探る。W杯メンバー23人の選考、事前合宿など、考えることは山ほどある。「何千ものディテールで判断を間違わないようにしないといけない」

日本を率いて間もなく3年。「新しいものをもたらし、日本人選手を進化させたい」と、世界基準のまなざしで鍛えてきた。「デュエル」の重要性を説き、したたかさも求めた。「島国に閉じこもり、その中で見えるものに満足してしまっている印象を受けた」。成長と勝利を求める思いが強いから、時に叱り飛ばし、期待に応えれば絶賛もする。

采配でも変革の手を打ってきた。実績のあるFW本田圭佑(パチューカ)らを外し、MF井手口陽介(G大阪)ら若手を大胆に抜てきした。「私はパフォーマンスのみを見ている。(本田らが)以前の高いレベルを見せてくれれば、代表に呼ぶことに支障はない」

競争の手綱は、本番まで緩めない。「W杯メンバー入りを確約されている選手は一人もいない。選手は、W杯でプレーするに値するベストコンディションに持っていかないといけない。『やる気がある』と口で言うのは簡単だが、真実はピッチの上にある」。厳しく見極めるつもりだ。

最近は、控えめな選手に歯がゆさを募らせる。「ピッチ外では素晴らしい性格の持ち主ばかり。しかし、変えたいのはピッチ上の姿だ。日本人はきれいなプレーで戦おうとして未熟なプレーにつながる」

日本に愛着を感じ、その気質を「教育や文化、伝統が影響しているかも」と尊重しながらも、試合になると、もどかしい。味方同士の声の少なさも気になる。「タッチライン沿いにいても、相手の声ばかり聞こえる時がある。選手たちも『変わりたい』という部分がなければ、進化はない」

W杯で勝つカギも<気持ち>だと考えている。「最終的に主役は選手。相手が格上でも臆せず、『自分たちもできる』と意欲的に挑んでもらう準備をする。相手より走り、積極的にぶつかってこそ、初めて勝つ可能性が出てくる。果敢に戦い、ベストを尽くす姿に、みんなが誇りを感じられるチームにしたい」

 

◇バヒド・ハリルホジッチ(Vahid Halilhodzic) ボスニア・ヘルツェゴビナ出身。旧ユーゴスラビア代表FWで、1982年のW杯スペイン大会に出場。仏1部リーグで2度、得点王に輝いた。内戦の影響で祖国を離れ、フランスを拠点に指導者のキャリアを積んだ。2014年W杯ブラジル大会でアルジェリアを初の16強に導き、15年3月から日本代表監督。65歳。

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