[ハリル監督 電撃解任](上)「和」の乱れ 修復できず

ウクライナ戦を控えた練習前に指示を出すハリルホジッチ氏(中央)(3月26日、ベルギー・リエージュで)=宇那木健一撮影

用意した書類にほとんど目を落とすことなく、日本サッカー協会の田嶋幸三会長は1時間近く、ハリルホジッチ監督の解任理由を説明した。「選手とのコミュニケーションや信頼関係」が崩壊した、と最終判断したのは3月、マリとウクライナに1分け1敗に終わったベルギー遠征という。

「ずっと(状況を)把握してきた。西野技術委員長らが打開しようと議論し、努力してきた。残念ながら(溝を)しっかりと埋めるまでに至らなかった。むざむざと見ているわけにはいかなかった」

歯に衣(きぬ)着せぬ言動で、勝利のためには周囲との摩擦を恐れなかった指揮官。その姿勢を疑問視する声は、W杯予選を突破する前から協会内で上がっていた。関係者によると、昨年8月末の豪州戦(埼玉)での結果次第で解任する、という方針も一度は固まっていた。昨年12月の東アジアE―1選手権でライバルの韓国に惨敗した後にも、続投の是非は話し合われた。技術委員の一人は、「大会後に、田嶋会長が後任探しを西野氏に指示したが、その後、保留していたようだ」と打ち明ける。

協会は、チームの「和」の乱れを感じ取り、危機感を募らせていった。ただ、欧州でプレーするベテランら選手の受け止め方は、必ずしも同じではなかった。

報道陣の前で、熱血のマンツーマン指導を受けた中堅選手は「監督はアイデアを与えてくれるだけ。全然違うことをしても、成功すれば、褒めてくれる」と言う。

2010年の南アフリカW杯での躍進を契機にして続々と増えた海外組は、各国で多くのタイプの監督と出会ってきた。好み一つで起用されないリスクと隣り合わせ。外国人選手が、気性の激しい監督に対して恐れもせずに意見をぶつける環境を見慣れている。

あるベテランは「『結果は出なかったけれど、仲が良かったから、いいグループだったね』なんて思わない。本気で、意見を言い合える関係でなければ、結果は絶対に生み出せない」と言い切った。

遠征は故障者続出にあえぎ、結果、戦術の浸透よりも選手のテストに重点を置かざるをえなくなってしまった。一方で、ウクライナ戦のハーフタイム、「監督は選手に見切られ、求心力はなくなっていた」とロッカールームでみていた関係者もいた。

田嶋会長は解任を決断。パリのホテルで7日、「選手とのコミュニケーションが足りない」と監督に解任を伝えた。後任に指名された西野氏は、チームを支えきれなかった責任を感じ、即答できなかったという。

田嶋会長は、9日の記者会見で「和」を呼びかけた。「最終的に良いチームにするのは、お互いに信頼し、コミュニケーションを取り合ってこそできる」

世界で戦いW杯16強の実績を持つ指揮官に対する賛否が割れ、チームを前進させる哲学がまとまらないまま、「ハリルジャパン」は終幕を迎えた。

◇昨年10月以降の日本の戦績

日付 会場 勝敗 スコア 対戦相手

17年 10月 6日 H ○ 2-1 ニュージーランド

10月10日 H △ 3-3 ハイチ

11月10日 N ● 1-3 ブラジル※

11月14日 A ● 0-1 ベルギー※

12月 9日 H ○ 1-0 北朝鮮

12月12日 H ○ 2-1 中国

12月16日 H ● 1-4 韓国※

18年 3月23日 N △ 1-1 マリ

3月27日 N ● 1-2 ウクライナ

(Hはホーム、Aはアウェー、Nは中立地。※はW杯ロシア大会出場国)

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