[ハリル監督 電撃解任](中)代表強化ぶれる理念

2015年3月の就任会見で日本協会の大仁邦弥会長(左)と握手を交わすハリルホジッチ監督。原氏の後任、霜田正浩技術委員長(右)らが体制を支えた(肩書は当時)

「三位一体」。JリーグとJクラブ、そして日本サッカー協会の関係性を指して、この言葉がしばしば使われる。J1鹿島の鈴木満強化部長は首をかしげる。「この2年間、三位一体が一番欠けているよなぁ」

常勝チームを長年支える鈴木氏は、2012年から協会技術委員会に携わってきた。新任時の委員長は原博実氏(現J副理事長)。協会が田嶋幸三会長となった16年からは西野朗氏がトップに就いた。西野氏は田嶋会長が「選手時代から、かわいがってもらった」と慕う存在だ。

鈴木氏は「以前は、原が『やりましょう』と締める係。協会とJリーグにまたがる話も、すぐに動いた」という。それが次第に建設的なムードの薄れや組織間の垣根を感じ、会長に「もっとサッカー界全体で代表強化を議論しないといけない」と提言したそうだ。

原氏は10年、イタリア1部リーグで優勝経験を持つザッケローニ氏を代表監督に招いた。人選で重視したのは「世界水準」の実績。欧州チャンピオンズリーグやW杯などを経験した指導者に白羽の矢を立て、交渉した。それまでJクラブ監督経験者や人脈に頼ってきたのと異なり、国際市場で競って優秀な人材を求めた。

14年にはアギーレ氏、15年はハリルホジッチ氏と、ともにW杯16強経験者を呼び、方針は貫かれた。ただ、原氏は16年、協会会長選で敗れてJリーグ副理事長に。その下で監督候補との交渉に奔走してきた霜田正浩氏も、16年末に協会を去った。後ろ盾を失ったハリルホジッチ監督は、協会への不信感や孤立感を折々ににじませるようになった。

田嶋会長は2月、2期目への所信として「W杯後、代表監督を選ぶ基準や考え方を整理しなければ」と語っている。代表監督とJクラブ監督らが接する機会を増やして「膝を突き合わせたディスカッション(議論)を制度化したい」と描き、選考基準に「クラブを回ることを考えているか」を挙げた。世界水準路線への評価は明言していない。

ハリルホジッチ監督解任を発表した9日の記者会見で会長は、後任とした西野氏を「最後まで監督をサポートしてくれた」とし、「(監督と選手との)信頼関係の薄れ」を収拾できなかった責任は追及しなかった。周囲からは「会長は日本人監督を望んできた」「西野氏が現場に戻りたい意欲は、そぶりからみて取れていた」との声も聞こえる。

形骸化する「三位一体」、人事で揺れる強化方針……。代表強化の長期的な指針が定まらない中、08年アジアチャンピオンズリーグをG大阪で制した西野氏に賭けた。急場しのぎの印象がぬぐえない解任劇は、国際市場にどう映ったか。将来の監督選考にも響きかねないリスクをはらんでいる。

<<
ニュース一覧へ戻る
>>