[ハリル監督 電撃解任](下)理想の戦術選手とズレ

ベルギー遠征でスタンドから練習を見つめる西野朗氏(3月19日、ベルギー・リエージュで)=青柳庸介撮影

3月、ベルギーの名門スタンダール・リエージュの施設で行われたサッカー日本代表の練習を、西野朗氏は一人、スタンドから見守っていた。2016年に日本サッカー協会の技術委員長に就いて以来、今月7日付で解任されたハリルホジッチ監督と報道陣の前で長く話し込む場面はほとんどなかった。ただ宿舎では、じっくり話をしたそうだ。

ワールドカップ(W杯)ロシア大会のメンバーを決める2か月前の欧州遠征でも、主力に故障者が相次いだ。指揮官が戦術を高めるより、戦力テストに比重を置かざるをえなかった事情は、西野氏も承知していた。一方、理想とするスタイルや戦術論に、監督と選手とのズレも感じ取った。「選手は、監督が要求するプレーや試合運びに近付こうとし、監督はもっと先に行っている感がないわけでもない」

昨年秋から2度の海外遠征で、強豪との強化試合を重ねてきた。W杯直前の春先にも欧州へ遠征したのは、ドイツ大会の06年以来。関係者によると、ハリルホジッチ氏が望んで協会も支持し、収益やメディア露出の大きい国内開催を今秋に6試合組むことで、スポンサーの理解も得たという。

遠征の結果は1分け3敗と厚い壁に阻まれた。3月に対戦したウクライナは「組織として柔軟で、その中で個人が技術を発揮してくる」とMF長谷部(フランクフルト)。スコアは1―2でも内容は完敗だった。

メンバーを固め、連係を磨いて挑んだ14年ブラジルW杯でも、個人能力の違いを痛感させられた。ビッグクラブに移籍したFW本田(当時ACミラン)やMF香川(当時マンチェスター・ユナイテッド)らに勢いがあっても1分け2敗に終わった4年前、翻って今は――。中堅や若手による突き上げが鈍く、中核を担えないことがチームが勢いづかない根本的な要因だ。

「我々に何ができるか認識しないと。幻想を抱いてはいけない」。ハリルホジッチ氏はウクライナ戦後に語っていた。相手を徹底的に分析し勝機を見いだす策士は、W杯で対戦する3チームの攻略法を、5月20日頃からの直前合宿で落とし込む算段だった。だが協会の田嶋幸三会長は「得手、不得手はあるかもしれないが、そんなことは言っていられない」と解任した。

後任となる西野氏は、10季率いたG大阪でJ1年間3位以内を逃したのは2季だけという好成績を誇る。「個人の力では打開が難しい」と、組織力で個の実力差を補っていく構えだ。

W杯まで約2か月。混乱のチームは結果を出せるのか。ハリルホジッチ氏と歩んだ3年間や前例のない解任劇が意義あるものだったと将来に残せるのか。重い使命を帯びた「西野ジャパン」は12日、スタートする。

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