[サッカーの惑星]ロシア編(4)多民族 華やぐカザン

カザンのクルシャリーフモスク。街はエスニックな雰囲気だ(3月28日)=三浦邦彦撮影

日本代表がワールドカップ(W杯)ロシア大会でベースキャンプ地とするカザン。中心部から北へ約8キロの場所にロシア・プレミアリーグの名門、ルビンのクラブ施設がある。8面のピッチに加えて宿泊棟もあり、6月中旬から日本代表が練習拠点として滞在する。

欧州チャンピオンズリーグ出場の実績もあるルビンは、トップチームや育成組織だけでなく、<二軍>も抱える。そこでプレーするMFアルマズ・シャラフェーエフ(20)は、8歳からルビンのスクールに通う。憧れの選手はメッシ(バルセロナ)と、サンクトペテルブルクを拠点とする強豪ゼニトのMFダレル・クズヤエフ(25)。「ダレルはロシア代表にいるタタール人。僕も将来、代表選手になりたい」と語るシャラフェーエフも、タタール人だ。

カザンは、ロシア連邦を構成する共和国の一つであるタタルスタンの首都で、文化的にはイスラム色もまじる。タタール人が半数を占め、4割ほどのロシア人を上回る。多様な民族を抱えるロシアで、とりわけカザンは民族文化の華やかな街だ。

「タタール語は、アゼルバイジャンの言葉に近い」と解説するのは、タタール人のティムール・トゥヘトゥロフ(21)だ。地域のW杯ボランティアのリーダー格。タタール語とロシア語に加えて英語やドイツ語、スペイン語も操り、カザンで開催された2013年のユニバーシアード競技大会や15年の世界水泳など30以上のイベントに携わってきた。「誰かを笑顔にできるし、運営のプロセスも学べる」。カザンはこれらのイベントを通じて、ボランティア精神をロシア全土に広げる発信地となった。

トゥヘトゥロフは16年、世界中の若いボランティアリーダーによるフォーラムの初開催を、国際大学スポーツ連盟の会議で提案し、翌年夏、91か国の110人が1週間、カザンで交流を深めた。「それぞれが美しい民族衣装を着た記念撮影は忘れられない。残念ながらロシアへのネガティブな固定観念は根強いけれど、友人と結びつくことで、この国の美しさや人々の笑顔、政治的なイメージとは違う側面を理解してもらえた」

今は、W杯を支える現場のリーダーとして研修に励む。W杯の歴史を学び、スタジアムの構造を覚える。初対面のボランティア同士が3分間の会話で共通点を見つける訓練もある。「誰とでもオープンな心で接することを学べる」という。

W杯開幕時期に再びカザンで開かれるフォーラムや、19年に行われる技能五輪の準備にも駆け回る。「互いの文化を尊重し、社会の違いを許容するのが、多様性だ。それがボランティア体験の醍醐(だいご)味であり、ロシアの魅力として世界中に伝わると信じている」(敬称略)

 

◆多民族国家

世界最大の国土面積を誇るロシアは、140あまりの民族を抱えているとされる。最多のロシア人が約8割を占める。カザン周辺に多いタタール人が2番目だが、人口約1億4000万人というロシア全体の中では約4%。ロシア人と同じ東スラブ系のウクライナ人が続く。それ以外に南部のカフカス系、ウラル系、モンゴル系など多彩だ。公用語のロシア語の他にも、100以上の言語があるとされる。

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