[サッカーの惑星]コロンビア編(上)規律・鍛錬 サムライが教材

平安時代の侍を主人公にした教材を前に、選手育成の重要性について語るコロンビア・サッカー連盟のルイス・エスコバル氏(3月7日、ボゴタで)=田口直樹撮影

◆内戦、貧困… 悲劇に負けず

「本当の反省とは過ちを認め、自分自身と競争すること」「間違うことは権利。それを正すのは義務だ」

コロンビア・サッカー連盟が2016年から子供たちの育成で使っている教材「キソの教え」の一節だ。主人公は、けまりの達人である平安時代の侍「キソ」、111の教えがイラストとともに紹介されている。14年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会3戦目に続き、6月開幕のロシア大会でも初戦で顔を合わせる日本とは妙に縁がある。

競技力だけではなく、規律や鍛錬、フェアプレーの大切さを説いて精神的な成熟を促すことに力を入れるのは、アルゼンチンやメキシコなど中南米の強豪国から学んだこと。連盟の育成プロジェクトにかかわるアンドレス・ムニョスは「勝つことやお金持ちになることが成功という考え方が支配的だったが、今では、ルールや相手を敬い、失敗から学んで日々向上することに意味があると伝えている」と力を込める。

現在、代表のエースで前回大会得点王、ロドリゲスや1990年代に活躍したバルデラマら名手を輩出しているが、実力伯仲の南米で、W杯出場は日本と同じ過去5回にとどまる。90年から3大会連続で出場したが、94年大会ではグループリーグ敗退につながるオウンゴールをしたDFエスコバルが帰国後に射殺される悲劇にも見舞われた。

その歴史は、不安定な国情と無縁ではない。86年大会は開催地に決まりながら、経済状況の悪化などを理由に辞退を強いられた。半世紀にわたる内戦は、まだ完全に終わったとはいえず、内戦を生み出した一因とされる貧富の格差についても、いまだに貧困層の割合は28%と高い。

子供をサッカー選手に育てようとしても、遠征する交通費やユニホーム代などを含めると最低賃金の2倍を稼いでも足りない。「サッカーが金持ちのスポーツになりつつある」という市民の不満も聞こえてくる。

それでも、他の南米諸国と同様、サッカーは特別な存在だ。連盟の調査では、国民の94%が「サッカーに興味を持っている」と回答したといい、4大会ぶりに出場した14年ブラジル大会で初の8強入りを果たした代表の躍進に人々はわきかえった。

連盟ゼネラルマネジャーのルイス・エスコバルは「欧州で活躍する選手が増え、4年前より戦力は充実している。国民に誇りをもたらすような活躍を見せてほしい」と、団結を呼ぶ活躍に期待を寄せる。(敬称略)

 

◆グループリーグH組、コロンビアの試合予定

(日付は現地時間、カッコ内は会場)

6月19日 日本戦(サランスク)

24日 ポーランド戦(カザン)

28日 セネガル戦(サマラ)

 

◇コロンビアの内戦

ともに1964年結成の左翼ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)や民族解放軍(ELN)が、政府との内戦を繰り広げてきた。死者は約22万人とされ、多くの国民が国内避難民となった。2016年にFARCとの和平合意は成立したが、元兵士の社会復帰プログラムは順調に進まず、途中で離脱して別の犯罪組織に加わる者も相次ぐ。第2勢力のELNとの和平交渉は難航している。

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