7か国語 頼れる守護神 川島永嗣

泥だらけになりながら練習する川島。「冬には芝が凍ることも」(3月15日、フランス・メスで)=青柳庸介撮影

◇GK 川島永嗣 35(メス)

サッカー日本代表は西野朗新監督を迎え、W杯ロシア大会への準備は仕切り直しとなった。残された短期間でチームを再構築し、世界に伍(ご)していくため、頼りになるのは、やはり日頃から「世界基準」に触れている選手。異国での語学や孤独などの障壁と向き合い、己の武器を磨いて欧州の舞台で自らを確立しようと奮闘し続ける姿を追った。

3月中旬、フランスのテレビ番組に生出演した。サッカーを題材に1時間、司会者やタレントたちと談笑する。普段から通訳をつけずにフランス語で話す語学力を買われて招かれた。

8年近い海外生活で初出演。「早口のジョークについていけるかな」と心配したが、日仏のサッカーや文化を比べる話などでスタジオを盛り上げ、「意外にできたなぁ」。唯一の誤算は、出演前のパリ・サンジェルマン戦で0―5と大敗したこと。「4失点の前半が終わった時、『なんて日を選んでしまったんだ』と思った」と笑う。

中学時代に外国映画を見て、「違う言葉を話す人が格好いい」と憧れた。プロ入り後のイタリア留学で「聞き取れず、話せない。自分がそこに存在しないような孤独」を感じ、語学学校に通った。夜中、イヤホンを付けてイタリア映画を見たまま寝たこともある。

2010年、初めて海外移籍したベルギーでは、積極的にチームメートと食事に出掛けた。話を理解したふりをすれば見抜かれた。笑いのネタにしてもらえたが、「1年目はサッカー文化への適応やコミュニケーションに悩んだ」。

DF陣への指示などで言葉は不可欠。分からない単語はすぐに調べ、使った。その繰り返しで英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語を身につけた。日本語や「最下位」というオランダ語を含めて7か国語。「育った環境も文化も違う友達と、サッカー以外の話もしたい」と、日本のスポーツ選手で随一の国際派になった。

語学力だけで信頼を得たわけではない。メスのアンツ監督は「最下位で失点を余儀なくされる展開ばかり。どれほどの困難に直面しても、絶対にくじけない最高の選手だ」と人間性を認め、3月、副主将に指名した。

キャリアを振り返っても「困難」の連続。所属クラブが見つからず、「契約の話が来れば気持ちが高まり、なくなれば絶望的になった」と、精神的に追い込まれた時期もある。メスでは3番手からのスタート。懸命にポジションを奪い、日本代表でも正GKに返り咲いた。

W杯ロシア大会では、日本もメスと同じように下位の立場だ。電撃的な監督交代という「困難」も加わった。「世界との差は何か、もう一度、考えないといけない。技術もフィジカルも、質を上げて成長しない限り、結果を残すのは難しい」と、繰り返し説いてきた。「難しい状況が増えるほど、自分を伸ばせる」とも信じてきた。そんな不屈の守護神がいることを今、欧州サッカー界の多くの人が知っている。(青柳庸介)

◇かわしま・えいじ 埼玉県出身。浦和東高(埼玉)卒業後、J2大宮入り。J1名古屋、川崎でプレーし、2010年W杯南アフリカ大会で16強入りに貢献。その後に渡ったベルギーでは、リールスで2季目に主将を務め、12年夏からスタンダール・リエージュに所属。スコットランドのダンディー・ユナイテッドを経て、16年夏からフランスのメス。1メートル85、74キロ。日本代表82試合出場。W杯は過去2大会、日本の計7試合にフル出場している。

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