不屈の心「1対1」に磨き 酒井宏樹

◇DF 酒井宏樹 28(マルセイユ)

5日の欧州リーグ準々決勝、ライプチヒ(独)戦。自陣ペナルティーエリア内で体を寄せてボールを奪い取ると、相手が大げさに倒れ込んだ。「早く起きろ!」と詰め寄り、アウェーの大ブーイングも構わずに両手を振り上げて味方を鼓舞。頼もしいディフェンスリーダーの姿が、そこにあった。

日本で数少ない長身のサイドバックは中学時代からスピードに乗ったダイナミックなプレーで注目されたが、精神的な弱さが課題だった。J1柏の下部組織では同期に気後れし、「毎日『何で俺だけできないんだ』と思ってた。練習に行くのが怖かった」。そもそも競争が苦手で「自分が試合に出ても、誰かが出られないことが嫌だった。スポーツ選手に向いていない」と笑う。

それでも、サッカーで生きると決めた。「足でやるんだからミスはつきもの」「マイナスからプラスにするのは大変。どんなにダメでも翌朝にはゼロに戻す」――。前向きな言葉や思考を探り、実践した。「今も精神面が強いわけじゃない。ただ、自分の力で壁を越えてきたという自負はある」

マルセイユはフランス1部リーグで9度優勝、1993年には欧州チャンピオンズリーグを制した名門。一つのプレーが時には国内外で議論の的になる重圧は計り知れない。そんな環境を選んだのは「ドイツでの4季は下位争いばかりで、自分が欧州で通用する選手か、ふるいにかける時期だと思った」からだという。

身体能力の高いアフリカ系選手が多く、強引に仕掛けてくるフランスのスタイルに当初は戸惑い、監督に「守備ができない選手」とまで言われた。相手の動きを研究、各国の代表級がそろう日々の練習に全力で取り組んだ。「純粋な1対1で止めるのは困難。相手がボールを持つ前に体を当てるとか、コースを消すとかをすれば、今はそうそう抜かれない」。地道な積み重ねで信頼を勝ち取ってきた。

2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会ではピッチに立てず、「『負けたことが悔しい』とすら思えなかったことが悔しかった」。今回は主力としてアジア予選を戦い、「代表の重みを感じられる。少しは進歩したかな」と話す。

21日に左膝を負傷し、復帰には最短で3週間かかると2日後に発表されると、すぐに自身のツイッターに「どんなに気をつけてもケガはつきもの。リハビリ頑張ります」と書き込んだ。厳しい世界で鍛えられた心は、折れることはない。(岡田浩幸)

 

◇さかい・ひろき 千葉県出身。J1柏の下部組織から2009年にトップ昇格。12年、ハノーバー(独)へ移籍するとともに、ロンドン五輪で日本の4強入りに貢献し、16年からマルセイユ(仏)に所属。14年W杯ブラジル大会は、メンバー入りしたが、出場機会はなかった。1メートル83、70キロ。日本代表41試合出場無得点。

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