[サッカーの惑星]アイスランド編(上)「氷の国」地熱で飛躍

代表の中心選手、G・シグルドソンが少年時代に練習したブレイザブリクの屋内練習場。人工芝の下には温水が流れている

◆年間通じ練習 黄金世代育む

国際舞台で実績のないアイスランドが、世界を驚かせたのは2年前に遡る。初出場だった2016年欧州選手権でグループリーグを無敗で突破し、8強入り。強豪のイングランドに2―1で逆転勝ちした決勝トーナメント1回戦は国民を熱狂させ、国内のテレビ視聴率は瞬間的に99・8%にも達したと報じられた。勢いのままワールドカップ(W杯)ロシア大会でも欧州予選I組を首位突破で初出場を果たした。

北海道と四国を足したほどの面積に約35万人が暮らす、北極圏に隣接する小国は厳寒に苦しんできた。「長い冬の間、外は真っ暗で、ピッチは凍りついていた。かつてサッカーは夏場だけのスポーツで、冬はハンドボールが主流だった」。元代表DFピエトル・マルティンソン(44)=写真=は回想する。12チームによる国内1部リーグのシーズンが4~9月と短いのは寒さを避けるためだ。

だが、ハンデを克服するパワーがあった。地熱だ。

世界有数の火山国で政府は、1970年代のオイルショック後、地熱発電の開発にかじを切り、今では電力の7割を水力、3割近くを地熱で賄う。蒸気とともに地下から噴き出す大量の熱水は、パイプを通って都市へ運ばれ、暖房や温水プールなどに活用される。

その行き先に、サッカー場が加わった。97年から同国サッカー協会で施設整備の責任者を務めるヨハン・クリスティンソン(61)は言った。「我々は幸運だった。ピッチを温めるお湯が、ふんだんに手に入ったのだから」

協会は2000年以降、企業と連携して施設整備を進めた。数えるほどだった人工芝フルコートは、屋内も含め約30か所に。子供がいつでも遊べるよう、学校の近くに150以上のミニピッチも作り、その大部分に温水が流れるパイプが埋め込まれている。「真冬でも凍らず、屋内なら汗をかくほど温かい」とクリスティンソン。国立競技場の天然芝ピッチに、温水パイプを敷く計画も進んでいる。

レイキャビク近郊のクラブ「ブレイザブリク」に室内フルコートができたのは02年。直後、下部組織に加入したMFギルフィ・シグルドソン(28)(エバートン)は、若くしてイングランドへ渡り代表の中心へと育った。小国ゆえの団結力と不屈の精神が持ち味だった代表の躍進の理由を、元代表GKグンレイフル・グンレイフソン(42)は「少年時代、砂利の上で練習していた我々と違い、今の選手は技術も備わっているから」とみる。

代表監督のヘイミル・ハルグリムソン(50)はいう。「年中、最高のコンディションで練習に打ち込める。施設の充実が選手育成に貢献した」。〈氷の国〉を解かした大地のエネルギーが、黄金世代を開花させた。(敬称略)

 

◇地下熱水の活用

国際空港近くのスバルツエンギ地熱発電所から排出された熱水を利用する温泉施設「ブルーラグーン」は有名。レイキャビクとその近郊では、約27キロ離れたヘトリスヘイディ発電所などからパイプラインで供給された温水を、市民約20万人が利用する。水圧を高めて高層階まで温水を供給するため、小高い丘の上に築かれた各400万リットルの巨大タンク六つを備えた貯水施設は、街のシンボルにもなっている。

 

◆グループリーグD組、アイスランドの試合予定

(日付は現地時間、カッコ内は会場)

6月16日 アルゼンチン戦(モスクワ・スパルタク)

22日 ナイジェリア戦(ボルゴグラード)

26日 クロアチア戦(ロストフナドヌー)

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